赤ちゃんを抱いた友人が、冷めきったカフェオレを見て言った。
「今日、温かい飲み物を飲むの、もう三回失敗してる」
テーブルの向こうで眠る赤ちゃんは、頬をふっくらさせながら、世界一平和そうな顔をしている。その隣で友人は、片方だけ裏返しになった靴下を履いていた。
産後の生活では、コーヒーが冷めるより先に、自分のことが後回しになるらしい。
私は独身で、現在は婚活中だ。
だから産後の大変さを「わかるよ」と簡単に言うことはできない。
ただ、その日の友人の笑顔が少しだけ薄く見えたことは、わかった。
「ちゃんと食べてる?」
そう聞いた私に、彼女は笑いながら答えた。
「食べてるよ。昨日は立ったまま食パン。今日は赤ちゃんが残した離乳食のかぼちゃ」
その献立を食事と呼ぶには、少し勇気がいる。
けれど、彼女はそれを冗談にして笑った。
笑えるくらいには元気で、笑わなければ泣きそうなくらいには疲れていたのかもしれない。
ママの笑顔の奥に、置き去りにされた小さな「私」

「幸せそうだね」が少し重たくなる日
「赤ちゃん、かわいいね」
私はそう言いながら、ベビーベッドをのぞき込んだ。
小さな手。やわらかそうな頬。ミルクの甘い匂い。カーテン越しの午後の光まで、赤ちゃんを歓迎しているように見える。
「かわいいよ。本当にかわいい」
友人は迷わず答えた。
そのあと、ほんの少し間を置いてから続けた。
「でもね、かわいいと疲れるって、普通に同時にあるんだね」
私は、その言葉を聞いて少し安心した。
母親になった女性は、いつでも満ち足りていて、赤ちゃんの寝顔を見れば疲れが全部消えて、朝は小鳥の声で目覚める——世の中には、そんな柔らかいイメージがある。
けれど現実には、小鳥ではなく泣き声で起きる。
しかも一晩に何度も。
友人はスマートフォンの写真を見せながら、「見て、この顔」と笑った。赤ちゃんのかわいい寝顔かと思ったら、画面に映っていたのは、深夜三時に撮ったという友人自身の顔だった。
髪は花火のように広がり、目は半分しか開いていない。
「妖怪・寝不足女」
自分でそう名づけた彼女に、私は思わず吹き出した。
けれど、美容業界で働いていた頃、同じような笑顔を何度も見たことがある。
子育て中のお客様は、自分の肌や髪の相談をしながらも、途中から必ず子どもの話になった。
「私に時間をかけるくらいなら、この子のために何かしてあげたいんです」
そう言って笑う姿は、やさしくて、きれいだった。
同時に私は、ときどき思っていた。
あなた自身も、その“してあげたい人”の中に入っていていいのに、と。
ただし、当時の私は独身だったし、今もまだ母親ではない。
外側からなら、いくらでもきれいなことを言える。
「休めるときに休んでね」
「バランスよく食べてね」
「周りを頼ってね」
どれも正しい。正しすぎるくらい正しい。
けれど、赤ちゃんが泣いている横で野菜を五色そろえ、主菜と副菜を整え、食後にハーブティーまで飲める人がいたら、その人はたぶん母親である前に時間管理の神様だ。
友人は言った。
「自分の食事を作る時間があったら、寝たいんだよね。でも適当に食べていると、それはそれで罪悪感があるの」
身体のことを気遣いたい。
でも、それを実行する体力が残っていない。
きれいでいたい。
でも、鏡を見るより一分でも長く目を閉じたい。
その矛盾は、怠けているから生まれるのではない。毎日を精いっぱい回しているからこそ生まれるのだと思う。
温めたスープと、電子レンジの小さな反乱
私は少しでも役に立とうと思い、友人の家でスープを温めることにした。
冷蔵庫には、彼女のお母さんが作ってくれた野菜スープが入っていた。
「これなら栄養もあるし、温かいものが飲めるよ」
私は、まるで人生まで立て直すような顔でスープを電子レンジに入れた。
婚活では相手の気持ちを読み違えることが多い私だが、電子レンジくらいなら扱える。そう思ったのが油断だった。
温めボタンを押した数分後、扉を開けると、ラップの隙間からスープが盛大にあふれていた。
庫内には、にんじん、玉ねぎ、そして私の善意が散らばっていた。
「ああ……」
私が固まっていると、友人は赤ちゃんを抱いたまま笑った。
「大丈夫。最近、私もミルクこぼしたし」
慰めの基準が、産後仕様でやさしい。
結局、私は電子レンジを拭き、残ったスープを二人で分けた。少なくなったスープの入ったカップを前に、私たちは妙に真面目な顔で乾杯した。
「こういうのを毎日ちゃんと食べられたらいいんだけどね」
友人がつぶやいた。
そのとき私は、食事を整えることは、献立を考えるところからすでに始まっているのだと気づいた。
買い物をする。
食材を洗う。
切る。
火を使う。
食べる。
片づける。
文字にすれば数行なのに、疲れている日の台所では、その一つひとつが小さな山になる。
一人暮らしの私でさえ、仕事で疲れた夜には、冷蔵庫を開けてから閉めるまで何も決められないことがある。
冷蔵庫の光を浴びただけで「今日は自炊した」と自分に言い聞かせた日もある。
まして友人は、自分の都合だけでは動けない。
食べようとした瞬間に赤ちゃんが泣く。
眠ろうとした瞬間に起きる。
ようやく座った瞬間に、おむつの交換時間がやってくる。
「産後って、赤ちゃんを育てる期間だと思ってたけど、自分を見失わないようにする期間でもあるんだね」
友人のその一言が、ずっと心に残った。
一袋のサプリに、期待と疑いを半分ずつ
その日の夜、自宅に戻った私はスマートフォンで産後の栄養について調べた。
私は何か気になると、冷静に調べているつもりで、気づけばタブを十数個も開いている。
婚活相手のプロフィールなら慎重すぎるくらい読むのに、利用規約はなぜか急に目が滑る。人間とは不思議だ。
そこで目に留まったのが、妊娠後期から産後・育児期の女性に向けて作られた「ベルタママリズム」だった。
公式情報によると、1日の摂取目安量3粒に酵母葉酸340μgを配合。DHA・EPAを含むオイルのほか、鉄、カルシウム、黒酢、にんにく、コラーゲンなど、産後の健康や美容を意識した成分がまとめられているという。ベルタママリズム公式サイト、開発ストーリー
私は正直、こう思った。
「一袋にずいぶん入っているけれど、本当にこれだけで大丈夫なの?」
もちろん、サプリメントは食事の代わりではない。
飲めば寝不足が消えるわけでも、家事が勝手に終わるわけでも、夜泣きした赤ちゃんが「本日はここまでにします」と閉店してくれるわけでもない。
体感にも個人差があり、「飲めば笑顔になれる」と単純に言えるものではないと思う。
それでも、献立を毎回完璧に整えることが難しい時期に、足りない栄養を補う選択肢がある。それは、「きちんとできない自分」を責める時間を少し減らしてくれるかもしれない。
私がいいなと思ったのは、美容を後回しにしがちな産後の女性を想定し、健康だけでなく“キレイでいたい気持ち”にも目を向けているところだった。
母親になった瞬間、女性が美容に興味を持たなくなるわけではない。
髪を整えたい日もある。
鏡を見て「今日の私、ちょっといいかも」と思いたい朝もある。
子どものためだけでなく、自分のために笑いたいときもある。
それは贅沢でも、母親失格でもない。
美容業界で働いていた頃、久しぶりに自分のためのケアをしたお客様が、帰り際に鏡を見てふっと表情をゆるめる瞬間が好きだった。
肌が一日で別人のようになったからではない。
「私はまだ、私を大切にしていい」と思い出した顔だったからだ。
一方で、購入前に確認しておきたいこともある。
ベルタママリズムは健康食品なので、病気の治療や不調の改善を目的とした医薬品ではない。食品アレルギーがある人、服薬中・通院中の人、体調に不安がある人は、原材料表示を確認し、医師や薬剤師へ相談したほうが安心だ。
また、すでに別のサプリを飲んでいる場合は、葉酸や鉄などの摂取量が重ならないかも確認したい。
「いろいろ入っているから、たくさん飲めばもっといい」という話でもない。摂取目安量を守ることが大切だ。
価格についても、家計に余裕がない時期なら軽く決められるものではない。
公式サイトには単品と定期コースがあり、価格やキャンペーン内容は変更される可能性がある。定期便を選ぶ場合は、申込時の継続条件を確認しておきたい。公式の案内では、変更や解約は原則として次回お届け予定日の10日前までに、電話または公式サポートLINEで手続きする仕組みになっている。定期便・解約の案内
疲れているときほど、小さな文字を読む集中力は行方不明になる。
けれど、後から「知らなかった」と困らないためにも、価格、回数条件、解約期限は元気な家族にも一緒に見てもらうとよいと思う。
ベルタでは商品だけでなく、希望者に専任担当がつくカスタマーサクセスの相談窓口も案内されている。飲み方や継続について一人で抱え込まず、疑問を確認できる相手がいる点は、判断材料の一つになりそうだ。ベルタ公式サポート
ただ、こうしたサプリが向いていない人もいる。
粒を飲むのが苦手な人、毎日の摂取が負担になる人、成分が体質に合わない人、食事だけで十分に栄養を整えられている人には、無理に必要とは言えない。
そして、強い疲労、気分の落ち込み、息切れ、めまいなどが続く場合は、「産後だから仕方ない」「サプリを飲めば何とかなる」と片づけず、産婦人科などの医療機関や地域の相談窓口を頼ってほしい。
心と身体のSOSは、努力不足の証明ではないから。
笑顔は、頑張った人へのご褒美ではなかった
数日後、私は友人にベルタママリズムのことを話した。
おすすめしたというより、「こういう選択肢もあるみたい」と情報を渡しただけだ。
彼女はスマートフォンの画面を見ながら、まず価格を確認した。
そこはさすが、生活者である。
「成分より先に値段を見る私、夢がないよね」
「大丈夫。私は婚活でも年収欄を一瞬見てから、慌てて趣味欄に戻ることがある」
二人で笑った。
友人は成分や定期便の条件を読み、夫にも相談してみると言った。
その答えに、私は少しほっとした。
すぐ買うことだけが前向きな選択ではない。
自分の食生活や体調、家計に合うかを考えることも、立派なセルフケアだと思う。
私たちは、「母親は自分より子どもを優先して当然」という空気に慣れすぎているのかもしれない。
けれど、ママの健康と笑顔は、家族から独立した小さなぜいたくではない。
毎日の土台だ。
だからといって、いつも笑っていなければならないわけでもない。
イライラする日があっていい。
部屋が散らかっていてもいい。
栄養バランスが、食パンと昨日のかぼちゃの日があってもいい。
サプリメントを使う日も、使わない日もある。
大切なのは、「今日もちゃんとできなかった」と自分を裁き続けるのではなく、「今日は何ならできそう?」と、自分に小さく聞いてあげることなのだと思う。
水を一杯飲む。
家族にお皿を洗ってもらう。
赤ちゃんが眠った五分だけ目を閉じる。
食事で補いにくいものについては、納得できるサプリメントを検討する。
それくらい小さな選択でいい。
完璧な栄養管理より、「自分も世話をしてよい人間の一人だった」と思い出せることのほうが、必要な日もある。
先日、また友人の家へ行った。
テーブルの上には、前回と同じようにカフェオレが置かれていた。
今回も、すっかり冷めていた。
「また飲めなかった」
友人は笑ったけれど、その横には自分用に用意した小さなおにぎりがあった。
豪華な食事ではない。
SNSに載せても、たぶん“映え”という言葉は遠慮して帰る。
それでも、自分のために用意した一個のおにぎりは、前より少しだけ彼女自身を大切にしているように見えた。
私はカフェオレを電子レンジへ運びながら言った。
「今度こそ、吹きこぼさないから」
「それ、前も聞いた」
二人の笑い声に驚いたのか、赤ちゃんが少しだけ目を開けた。
産後の毎日は、きっと簡単には整わない。
笑えない日もあるし、自分を好きになれない夜もある。
でも、冷めたカフェオレをもう一度温めるように、自分の元気も何度だって取り戻そうとしていい。
あなたは今日、自分のために何を一つ用意してあげますか。









