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犬に二度見された朝、私のウォーキングダイエットはやっと続き始めた

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ウォーキングで有酸素運動ダイエット

朝の住宅街を歩く書き手

朝七時、住宅街の角で、私は急に「歩き方」を見失った。

背筋を伸ばし、腕を大きく振り、歩幅を広げる。動画で見たコツを全部のせした結果、完成したのは、健康的な女性ではなく、選挙活動中の人みたいな私だった。

しかも、すれ違った犬に二度見された。

犬は正直だ。鏡より正直で、遠慮というものがない。

それでも私は歩き続けた。頬に当たる朝の風はまだ少し冷たく、近所のパン屋からは、焼きたてのバターの匂いが流れてくる。

ダイエット中のウォーキングコースにパン屋を入れたのは、設計上の重大なミスだったと思う。

私はサクラック。作家を目指しながらブログを書いている独身女性で、現在は婚活中でもある。飲食業界と美容業界で約十年働き、人の笑顔や悩みに触れてきた。

人をきれいにするには、まず自分の心が整っていること。

そう思っているのに、自分のこととなると話は別だ。体重計の数字ひとつで心が散らかり、昨日まで機嫌よく着ていた服にまで八つ当たりしたくなる。

そんな私が最近、ウォーキングを「ただ歩く時間」から「少しだけ効率のいい有酸素運動」に変えようとしている。

大げさな道具は要らない。特別な才能も要らない。

ただし、何も考えずに歩くのと、姿勢や速さ、続け方を少し意識して歩くのとでは、同じ三十分でも手応えが違う。

今日は、私が犬に二度見されながら覚えた、その“少しの違い”の話をしたい。

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痩せたいのに、頑張っている顔は見せたくなかった

「歩くだけならできる」に隠れていた、小さな見栄

ウォーキングを始めた理由は、とても立派……ではなかった。

ランニングは苦しそう。ジムは月会費を払った瞬間に満足してしまいそう。家で筋トレをすると、床に寝たままスマートフォンを見始める未来が、あまりにも鮮明に見える。

だから私は、「歩くだけならできる」と思った。

ところが、この“歩くだけ”という言葉には、少し格好悪い本音が混ざっていた。

きれいになりたい。でも、必死だと思われたくない。

努力はしたい。でも、努力している姿はなるべく見せたくない。

涼しい顔で「あ、私、ただ散歩しているだけです」と言いながら、内心では脂肪に退去勧告を出したかったのだ。

美容業界で働いていた頃、お客様から「何もしていないんです」と言われることがよくあった。

けれど、話を聞いてみると、日焼け止めを塗り、湯船につかり、睡眠時間を整え、毎日のケアを丁寧に続けている。

私はそのたびに思っていた。

何もしていない人ほど、静かに何かを続けている。

それなのに自分は、三日歩いただけで「そろそろ脚のラインに何か起きてもいい頃では?」と期待していた。

せっかちな美容担当者が、いちばんせっかちな客になっている。

ウォーキングは、歩いた瞬間に体重が落ちる魔法ではない。体重管理には、活動量だけでなく食事や睡眠なども関わる。

歩いたご褒美にクリームたっぷりの菓子パンを二つ食べたら、私の中では健康と幸福が手を取り合うけれど、ダイエットの計算は別である。

だからまず、「短期間で結果を出して、何食わぬ顔をしたい」という見栄を置いていくことにした。

ウォーキングの良さは、派手な決意がなくても生活へ入れられることだ。

厚生労働省のガイドでも、個人差を踏まえて、今より少しでも多く体を動かすことが基本に置かれている。

成人の目安としては、歩行または同等以上の身体活動を一日六十分以上、約八千歩以上と示されているけれど、最初から数字を全部達成しなければ無意味、という話ではない。

活動量が少ない人ほど、今より少し増やすことにも意味があるとされている。

私に必要だったのは、完璧な一万歩ではなく、昨日より十分だけ多く歩くことだったのかもしれない。

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張り切った朝、知らないおばあさまを追い抜けなかった

ウォーキングを有酸素運動らしくしたくて、私は「速く歩こう」と決めた。

その日の私は、靴ひもを固く結び、スマートフォンの歩数計を起動し、かなりやる気に満ちていた。

腕を振り、歩幅を広げ、呼吸まで勇ましい。

ところが、前方を歩く小柄なおばあさまとの距離が、いっこうに縮まらない。

私はこんなに全身で“運動しています”と表現しているのに、おばあさまは買い物袋を片手に、淡々と進んでいく。

フォームに無駄がない。

こちらは腕だけ元気で、前に進む力が少ない。

信号で追いついたとき、おばあさまが私の靴を見て言った。

「歩きやすそうな靴ね」

「はい。今日からちゃんと歩こうと思って」

そう答えると、彼女はにこっと笑った。

「最初から飛ばすと、明日イヤになるよ」

青信号になり、彼女はまた軽やかに先へ行った。

それは、接客の現場で何度も見てきたことにも似ていた。

初日に全部を変えようとする人ほど、疲れてしまう。スキンケアも食生活も、一度に十項目を始めるより、一つを無理なく残したほうが続く。

歩く速さも同じだった。

目安にしやすいのは、のんびり散歩より少し速く、息が少し弾む程度。

厚生労働省の成人向けガイドでは、「息が弾み汗をかく程度の運動」を週六十分以上の目安としている。

ただし、体力には個人差がある。

私は“隣の人と短い会話はできるけれど、長い歌は歌いたくない”くらいを、自分の速歩の感覚にした。

そして、最初から三十分ずっと速歩にしない。

まず五分ほど普通に歩いて体を温め、そのあと一〜三分だけ少し速くする。息が上がったら、また普通の速さへ戻す。

速歩とゆっくり歩きを交互に入れると、道全部を敵に回さずに済む。

このやり方なら、信号待ちも敗北ではなく休憩になる。

人生もウォーキングも、止まった瞬間を失敗に数えないほうが続きやすい。

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腕より先に、肩の力を抜いてみた

ダイエット効果を上げたいと思うと、つい「もっと大股」「もっと速く」「もっと長く」と足し算をしたくなる。

けれど私の場合、最初に必要だったのは引き算だった。

肩の力を抜く。

あごを軽く引く。

視線は足元だけに落とさず、少し先へ向ける。

背中を無理に反らすのではなく、頭の上から糸でふわっと引かれているように立つ。

腕は肘を固めず、体の横で自然に後ろへ引く。

歩幅も、無理な大股にする必要はない。

普段よりほんの少し広く、足を前へ投げ出すのではなく、後ろ足で地面を押して進む感覚にすると歩きやすかった。

かかとからそっと着地し、足裏全体へ体重を移し、つま先へ抜く。

とはいえ、歩き方に痛みが出るなら、“正しいフォーム”へ体を無理に押し込めない。

正しさより、自分の足が嫌がっていないことのほうが大事だ。

呼吸についても、私は最初「鼻から二回吸って、口から二回吐く」のように数えていた。

しかし、歩数、姿勢、腕、呼吸を同時に管理しようとして、脳内が小さな運動部の監督会議になった。

今は、息を止めないことだけを意識している。

数分歩いて体が温まり、少し息が弾む。けれど苦しすぎない。

その程度から始めると、翌日も靴を履きやすい。

さらに私が変えたのは、時間の考え方だった。

三十分まとまって歩けない日は、朝十分、買い物で十分、夕方十分でもいい。

遠いスーパーまで行く。エスカレーターではなく階段を選ぶ。一駅分だけ歩く。

ウォーキング用の時間だけでなく、生活の移動も身体活動になる。

厚生労働省は、座りっぱなしの時間が長くなりすぎないようにすることも勧めている。

ブログを書いていると、私は文章より先に椅子と一体化しそうになる。

そんな日は、原稿の区切りで立ち、飲み物を取りに行き、ベランダへ出る。

わずかな移動でも、“今日は運動できなかった”というゼロ判定から私を救ってくれる。

ダイエットを目的にするなら、歩く回数や時間だけでなく、歩いた後の自分も見ておきたい。

「運動したから大丈夫」と食事が大きく増えていないか。

睡眠不足で翌日に動けなくなっていないか。

靴が合わず、足に痛みが出ていないか。

歩数計の数字は便利だけれど、数字が私の偉さを決めるわけではない。

七千九百九十八歩で一日を終えたからといって、二歩ぶん人間性が足りないわけでもない。

安全面も忘れないようにしている。

運動前後はゆっくり歩いて体を慣らし、水分を用意する。暑さが厳しい時間や、暗くて足元が見えにくい道は避ける。

胸の痛み、強い息苦しさ、めまい、いつもと違う痛みがあれば中止する。

持病や服薬がある人、運動に不安がある人は、始める前に医療機関へ相談したほうが安心だ。

痩せるために始めたことで、体を傷めては話の筋が迷子になる。

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体重計より先に、朝の機嫌が少し軽くなった

数日後、同じ道をもう一度歩いた。

今度は、全部を完璧にやろうとしなかった。

最初はゆっくり。

公園の手前だけ少し速く。

信号で呼吸を整え、肩が上がっていることに気づいたら、ふっと力を抜く。

前を歩く人を追い越す必要もない。

昨日の自分より、ほんの少し気持ちよく歩ければいい。

体重計の数字は、映画のように劇的には変わらなかった。

むしろ前日の塩分のせいなのか、少し増えていた。体重計には、こちらの努力を察する情緒がない。

それでも、朝の機嫌は少し軽かった。

歩いているあいだは、婚活アプリの返事も、書きかけの記事も、将来へのぼんやりした不安も、いったんポケットの中で静かになった。

足音が一定になると、頭の中の言葉まで少しずつ並び直されていく。

私はこれまで、ダイエットとは自分の嫌なところを削る作業だと思う日があった。

でもウォーキングを続けていると、そうではなく、自分を雑に扱わない時間を増やすことなのかもしれないと思う。

姿勢を少し整える。

速歩を少し混ぜる。

短い時間でも積み重ねる。

食事や休息を“なかったこと”にしない。

コツというのは、楽を禁じるルールではなく、無理なく続けるための知恵なのだ。

歩くだけでいい。

けれど、ただ歩くだけの日にも、ほんの少し工夫はできる。

今朝も例の角を曲がると、あの犬がいた。

私はもう、選挙活動のように腕を振ってはいなかった。肩の力を抜き、少し先を見て、自分の呼吸に合う速さで歩いた。

犬はこちらを一度見て、すぐに別の方向を向いた。

認められたのか、興味を失われたのかは分からない。

でも昨日より少しだけ、私は自分の歩き方を好きになっていた。

あなたなら、いつもの道のどこから少しだけ速く歩いてみますか。

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【参考情報】

厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」成人版
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-002.html

厚生労働省「身体活動・運動を安全に行うためのポイント」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/exercise/s-00-008.html

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